・水槽
基本的には水槽サイズは自分のニーズに沿うもので問題ありません。水槽サイズ選びに迷ったなら、カラシン飼育の場合、あとで紹介する過密飼育のことも念頭に置いて前面幅30cm程度の少し小さめの水槽をお勧めします。 最近では左の写真のようなフレームレス水槽のようにフレームを取り払うことで自然の一部を切り抜いたように魅せるファッショナブルな水槽もありますが、その辺りは好みのもので構いません。 |
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・ヒーター
飼育するカラシンの生息地によって高水温を好む種類と比較的低水温を好む種類、または適応範囲が広い種類と様々です。例えばネグロ河に生息するカラシンは比較的高水温を好む傾向にあります。以上のことからカラシン飼育の場合、水温が固定されるオートヒータータイプよりも自分で水温を調整できるサーモスタット付きのものが良いです。種類にもよりますが25〜30度程度の間で調整できるものであれば問題ないでしょう。勿論、水槽のサイズに対応できるものを選びます。 |
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・水槽フタ
たかがフタと軽視されがちですが、カラシンはよく飛び出すのでフタは必需品です。重要なのはできる限り隙間のないものを選ぶことです。フレームレス水槽の場合は、フタを支える金具も必要ですが、大概はセットになって販売されています。 ハチェットなど一部の種類はフタをしていても僅かな隙間から器用に飛び出したりするので注意が必要です。
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・ライトシステム
カラシン飼育とはいえ水槽内で日中と夜間のメリハリをつけるため、カラシンの健康状態を把握しやすくするためにもライトシステムはあった方が賢明です。水草も投入するならば必須と言えます。ライトシステムは水槽の上に直接置くタイプやアーム式のタイプ、リフトアップ式のタイプまで様々ですが、夏場の水温上昇のことを考えると熱が逃げやすいアーム式のタイプかリフトアップ式のタイプがお勧めです。蛍光灯の場合は使い始めた日付を記入しておくとおおよその交換時期を覚えておけると思います。LED式のライトなら球の交換が不要で半永久的に使えます。
・底床
カラシンでは「ソイル系底床」と呼ばれる天然土壌を高温で焼き固めたものがお勧めです。なぜならソイル系底床の多くはカラシンに適切な弱酸性の水質に安定させる効果があり、カラシンの健康保持や色揚げ効果が期待できます。なおソイル系にはpHをそこまで下げないものからpH5.0近くまで下げるものまで様々なタイプが販売されているので、飼育するカラシンの種類によって使い分けると良いでしょう。(多くのカラシンはpH6.0〜6.5を好みます)またソイル系は色が暗色のためカラシンの体色が映えます。サンゴ砂のような水質をアルカリ性に傾けてしまう底床はカラシンには不向きです。
備考;ソイル系底床の分類について
一般にソイル系底床と呼ばれる底床は大きく分けて吸着系と栄養系の2つに分けることができます。簡単に説明すると吸着系は飼育水中の濁りの元となる成分や水質汚濁に関わる化学物質を吸着する効果が高いソイルで、栄養系は水草等を育てるのに必要な栄養分を豊富に含むソイルのことです。カラシンの飼育においてはこの2つのうち特にこちらがお薦めだといったことはありません。自分の用途に合うソイル系を選べば良いと思います。
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・フィルター一式(ろ過システム)
飼育水を浄化するためのろ過装置はカラシンでも必須です。飼育水を循環し清潔に保つだけでなく、水槽内への酸素補充の役目もあります。濾過の方式によって様々なものが販売されています。代表的なものには完全に本体が水中にある水中フィルター、本体が外置きの外部式フィルター(左写真)、水槽に引っ掛けて使う外掛け式フィルターなどがありますが、使い勝手を考えると少々割高ですが外部式フィルターがオススメです。 |
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水中フィルターはフィルター本体と水槽壁面の隙間やフィルター本体の隙間にカラシンが挟まって抜け出せなくなってしまうことがありカラシン飼育ではお勧めできません。外掛け式フィルターはその設置位置上、水槽フタに隙間が生じてしまい、カラシンの飛び跳ねの原因となることがあります。
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・飼料(エサ)
カラシンは人工飼料でも食わず嫌いせずよく食べますので基本的に生き餌は必要ありません。
ただ一部例外として、ダーターテトラやワイツマニーテトラ、セルフィンテトラ、テガータステトラの仲間は人工飼料には餌付きにくいため、ブラインシュリンプなど生き餌を用意しておいたほうが無難です。ブラインシュリンプは休眠乾燥卵がショップで販売されており自分で孵化させて給餌します。人工飼料ではカラシンの口の大きさに合わせ、粒の細かいものを選ぶか、フレーク状のものなど粒の大きなものは食べやすいようにすり潰して与えるとよいでしょう。
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・魚病薬
カラシンが病気に罹った際に必要になりますので予め何種類か常備しておきましょう。熱帯魚を飼育していて必ず経験するであろう白点病の治療薬として「マラカイトグリーン水溶液」はカラシン飼育でも必須です。またカラシンはエロモナス症やカラムナリス症など細菌性感染症に罹りやすいのでその治療薬「エルバージュ」や「パラザン」「グリーンFゴールド」なども一通り常備しておくと、万が一の時に対処しやすいです。「マラカイトグリーン水溶液」「エルバージュ」「パラザン」「グリーンFゴールド」、この4種の魚病薬さえあれば殆どの病気に対応できます。薬を使う際は添付文書を熟読し内容を把握してから正しく使いましょう。
Lecture2.カラシンを購入しに行こう!
a.販売水槽の中から健康な個体を見つけよう!
小型カラシンはサイズが小さいがゆえに抵抗力が弱く、購入時の状態が導入後の生死を左右します。ショップ側が許す限りは自分の目で選別して購入する個体を指定すべきです。そのためにはやはりある程度、良個体を選別する目を養っておかなくてはなりません。ここではカラシンについて良個体を見分けるためのポイントを紹介します。
Point1.水面は循環しているか?個体の体表やヒレ先に気泡が付いていないか?またはただれたようになっていないか?
書物などでよく見る「体表にツヤのあるものを選びましょう」というのを具体的に示したのがPoint1.です。
状態を崩した個体は、免疫応答の影響で普段よりも体表に多量の粘液を分泌します。そのため体表がただれたり(=ツヤがなくなる)、エアーレーションの気泡が(粘液に引っかかって)体表やヒレ先に付着したりします。またこのような症状を目視・確認できない場合でも、そのような個体がいる水槽の水面は、分泌された粘液による被膜が形成されて波立っていない状態になっていることが多いです。
それらの症状が見られる場合、その水槽にいる個体の購入は控えたほうが無難です。
Point2.鱗の状態と、目の状態、各ヒレの状態は正常か?
これは良個体を見分ける上で大きな分岐点となるポイントです。まず鱗が立っているもの(逆鱗や立鱗といいます)はエロモナス症を発症している可能性があるため購入は控えます。次に目が突出しているものは何らかの細菌性感染症に感染している恐れがあるため購入は控えます。見分けがつけにくいのが、各ヒレの欠落、裂け目が見られる場合で[1]尾腐れ病、[2]単なるスリ傷の2通りが考えられます。[1]の場合はヒレの切れ目に沿って小さな水泡が付いていたり、縁が白っぽく変色していたり、はたまた切れ目に沿って白い綿のようなものが付着しているのでこのような場合には購入を控えます。逆に切れ目部分に先記したような症状がない場合は[2]単なるスリ傷と判断できますので、購入しても問題はないでしょう。(カラシンの場合は回復します)
Point3.魚肌が赤く血がにじんでいないか?(赤斑という)
輸入直後のワイルドカラシンでよく見られるのがPoint3.の赤斑(血で魚肌が赤く見える)をいう症状です。こうした症状は大抵、エラ部分や腹部に出やすいためそのを重点的に観察するとよいです。赤斑が見られる場合は、細菌性感染症が強く疑われるため、購入を避けます。
Point4.体が白濁していないか?(特に背中あたり)
これは基本的にはすべてのカラシンにおいて、体調を崩していたりpHショックを起こしている場合に見られる症状です。特にグラス系カラシンに多く、背部に出やすいといえます。多くはpHショックなどによる一時的なものですが、中にはエロモナス症の初期であったりするケースも見られるので、ある程度の分別が付くまでは購入は控えたほうがよいでしょう。慣れれば、同じ白濁でも病気の予兆か一時的なものかの区別が付くようになりますが、その違いを言葉で表すのはなかなか難しいので割愛させていただくことにします。
Point5.呼吸の速さは正常か?
呼吸の速さはカラシンの口の開閉の頻度やエラの動きを見れば分かりやすいかと思います。他の個体と比べて呼吸の速さが明らかに速いと何らかの細菌性感染症が疑われるので購入は避けましょう。
他にも良個体を見分けるコツはいくつか知られていますが、どれも非常に曖昧なものが多いので、始めのうちは上記5つのPointを重視するとよいでしょう。また同じ種類でも異なるサイズの個体が複数いる場合は魚の年齢が若くて購入後も長く楽しめる個体、すなわちなるべく小柄な個体を指定するとよいでしょう。ショップの販売水槽で給餌が行われた場合には「ちゃんと餌を食べているか?」なども加えて観察しておきましょう。
b.パッキングしてもらおう!〜注文からパッキングまで〜
上記の要領で状態のよい個体を見つけたら、店員さんを呼んで網で掬ってもらいましょう。ただし、カージナルテトラやネオンテトラのような人気種は同じ種類が1本の水槽に大量にいて、個体を指定して購入するのが難しいことがあります。このようなケースでは掬ってもらった後に、「ちょっと見せてください」とお願いして、上記の項目をチェックするとよいです。個体を指定して購入した場合でも、掬ってもらった後には一度確認させてもらうとダブルチェックとなり、安心ですね。
掬ってもらった魚はパッキングしてくれますが、その際は帰宅の所要時間を告げると、それに見合った水量と袋サイズにパッキングしてくれるので安心です。酸素自体は袋のままおおよそ1日はもつくらいの量が通常は入れられますが、夏場は水量が少ないと持って帰る途中で酸欠に陥ったり、容易に水温が上昇してしまうこともあり、所要時間はぜひ告げたいところです。
Lecture3.水合わせをしよう!〜水合わせから自宅の水槽に導入するまで〜
購入したカラシンはすぐに水槽に放ってはいけません。ショップの水槽の水と自宅水槽の水では水素イオン濃度いわゆるpHなどの水質や水温が異なるため、その差によるショック死を防ぐために、「水合わせ」という作業を行います。通常、この水合わせはまず袋のまま飼育水に20分ほど浮かべ、次に飼育水を袋内に少しずつ加えていき、飼育水と袋内の水の水質を近づけ、そしてやっと魚を水槽内に放すというように非常に時間をかけて慎重に行うものです。ただ、カラシンの場合、種類にもよりますが大抵はこの水合わせはそこまで神経を使わなくても大丈夫であることが多いです。私の場合、パッキングの袋のまま20分〜1時間ほど自宅水槽に浮かべておき(袋内の水と自宅水槽の水との水温を合わせるため)、そのあと魚だけを網で掬って水槽内へ放っています。先述したような慎重な水合わせが必要なのはトゥッカーノテトラやペンシルフィッシュの仲間、ワイツマニーテトラ、グラステトラの仲間くらいではないかと思います。しかし、慎重にするに越したことはないので不安な人は慎重な水合わせを行うと良いでしょう。
しかしいずれのやり方でも重要なのは、袋内の水(ショップの水)は自宅水槽の飼育水に入れないことです。これはショップの水から細菌類や病原菌を持ち込まないようにするためです。他サイトなどを見ていると、袋内の水と一緒に魚を放すといった記述が見られることがありますが、これは外部から病気を持ち込む危険性を高める誤ったやり方といえます。
Lecture4.水槽導入後の管理
カラシンを自宅の水槽に放ったら(=導入したら)、少なくとも導入したその日の間は頻繁に観察しましょう。具体的には、
1.体側に白点など明らかな異常はないか?
2.餌をしっかり食べているか?
3.異常な泳ぎ方・過呼吸をしていないか?
の3点をまずは確認しましょう。いずれかに当てはまる症状が見られた場合、その後数日も注意深く観察する必要があります。場合によってはすぐに薬で治療することも有り得ます。症状により病気の治療法を参考に対処していきましょう。
いずれにも当てはまらない場合はひとまず無事に導入できたといえます。あとは日常管理がしっかりできれば素晴らしいカラシン飼育をenjoyできるでしょう。
Lecture5.餌の与え方
餌の与え方というタイトルに少し戸惑われた方もいるかもしれません。しかし餌の与え方は意外に奥が深いもので、例えば与える量、餌の種類、餌の大きさなどを誤ると思わぬ事態を引き起こすことがあります。熱帯魚の飼育本では「餌は魚が数秒のうちに食べ切れる量を与える」のが一般的によく言われます。これは餌の与え方における最も基本的な原則です。実際には魚の種類においてプラスアルファの与え方を考えなくてはなりません。ここではカラシンにおける餌の与え方を紹介します。
給餌は基本的に朝と夜の2度行います。しかし1本の水槽で何匹ものカラシンを飼育しているとかなりの確率で餌の取り合い競争に負ける「餌を食べ損ねる個体=弱い個体」が出てきます。その状態が日常的に続くと最悪の場合餓死してしまうこともあります。カラシンは縄張り意識が強い種類が多いため、このような事態が起こりやすいといえます。これを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。
もっとも効果的な方法は「1度の給餌を数回に分けて行う」です。1度の給餌を少量ずつ何回かに分けて行います(分割投与する)。このとき、1回目の分割投与では水槽の右端から行い、1回目分をまだ食べ終わっていないタイミングで2回目の分割投与を今度は水槽の左端から行い、次はまた右端から・・・といった具合に餌を飼育水内に落とす場所を数カ所に分けると一層効果的です。これは、強い個体は1回目の分割投与に真っ先に飛びついてきますので、その間に反対側から給餌することで弱い個体も餌に有り付けるといった考え方です。こうすることで水槽内にいるすべての個体に餌を行き渡らせることができ、餓死の恐れも低くなります。
Lecture6.気性の荒いカラシンの混泳
小型カラシンの中にはブルーテトラなどのように気性(性格)の荒い種類も少なくありません。このようなカラシンを性格の大人しい種も含め他の小型種と混泳したい時、どうすれば良いのでしょうか。答えは「やや過密飼育すること」です。カラシンの仲間の性格の荒さの多くはテリトリー意識の強さに起因します。そこで少々過密飼育してやることで個々の個体のテリトリー領域を狭くしテリトリーを持ちにくくすることで他種を追尾するような性格が緩和されます。
この方法で性格の荒さが100パーセントなくなることはありませんが、少なくとも混泳できる環境に持っていくことは可能です。(もちろんこの場合でも温和な種類のために水草を植える等隠れる場所は作ってあげましょう)ただし、鱗食のスケールイーターや小型魚を食す恐れのあるレビアシナ属などのカラシンにはこの方法はそもそも使えないのでご注意を。
Lecture7.カラシンがいる水槽のコケ対策
熱帯魚を飼育していると必ず悩まされるのが水槽に生えるコケです。カラシンを飼育する場合も例外ではありません。通常コケ対策として日常管理の面では「飼育水が富栄養化しないようにする」ことがポイントとなります。他サイトでもコケ対策としてこのことはよく唱われています。しかし私の考えでは、複数のカラシンを飼育していると飼育水が富栄養化しない状態を長期間維持することは、水換えの頻度や濾過層への活性炭の利用等を考慮してもかなり難しいことであると思います。(ましてLecture6.で紹介したような過密飼育をしている場合等ほぼ不可能でしょう)
そこでお勧めしたいのがオトシンクルスやカノコ貝などを利用する方法です。(一般にはコケ対策生物兵器などと言われていますね)
オトシンクルス |
![]() カノコ貝 |
ミナミヌマエビ |
![]() ヤマトヌマエビ |
またオトシンクルスなど吸着系はペレズテトラのような体表面積の広いカラシンの体表に吸い付くことがあるため注意が必要です。さらにオトシンクルスはショップでの入荷状態が悪いことが多く病気の持ち込みに注意が必要です。加えてオトシンクルスの生存率は購入時の状態にかなり大きく左右されます。健康で元気なオトシンクルスの選び方のポイントとしては、
1、眼が凹んでいない個体を選ぶ。
2、体色が色褪せていないやや黄色がかった個体を選ぶ。
3、痩せている個体は避ける。
があります。これらのポイントに注意して健康で元気なオトシンクルスを購入しましょう。
カノコ貝や石巻貝は淡水飼育下で繁殖しないので扱いやすいですが、石巻貝はひっくり返ると自力では起き上がれないためカノコ貝のほうがお薦めです。(カノコ貝やサザエ石巻貝は自力で起き上がります)アップルスネールなどタニシ系は水槽内で繁殖しすぎてしまい、結果的に大量のフンによる水質悪化につながるためあまりお薦めできません。
もちろんこれらの生物に完全に頼ってしまうのではなく、ろ過システムのメンテナンスなども必要に応じて行いコケが生えにくい環境を作ることが大切なことは言う間でもありません。
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今後も「日常管理」について様々なコンテンツを更新予定です。
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