プラチナ化の原因The cause which becomes platinum.
珍カラに限らずすべての観賞魚にまれに見られるプラチナ化個体。そのプラチナ化の原因はよく言われるような
発光バクテリアによるものではありません。ここではプラチナ化について最新の学術見解を元に徹底解説してみました。


貴重とされるプラチナ化したカラシン。プラチナ化とは一体何なのでしょうか。

Q.プラチナ化は発光バクテリアではない!
一般的にはカラシンや他魚(ゴールデンデルモゲニーなど)のプラチナ化は発光バクテリアの奇生による ものだと考えられていたが、実はこれは間違った古い情報であり、現在はプラチナ化の原因は寄生虫の幼生が奇生時につくる繭状物質の周囲にグアニン光沢色素と言う色素ができ、このときに層に蛍光灯や自然光が当たって光って見えるためとされている。これが一般にプラチナだとか、ゴールデンだとか言われているものの正体ということだ。(ドイツの魚類学者Geryによる)
寄生虫の仕業であるということを裏付ける根拠としてはプラチナ化したカラシン以外の魚の一部でその寄生虫が原因と思われる寿命が短くなる、または病的な症状が見られることが挙げられる。例えばデルモゲニーの場合だ。この魚がプラチナ化したゴールデンデルモゲニーの中には、ポップアイ(眼球が突出すること)の個体が見られることがある。カラシンではプラチナ個体でも寿命が短くなることはないとされるが、私の感覚ではペンシルフィッシュのプラチナ個体はノーマル個体と比較した場合、若干寿命が短命であるように感じる。
またプラチナに金と銀の 2種類があるのは寄生虫の種類の違いが原因だと考えられる。さらに宿主となるカラシンの元の体色にも影響されるようだ。宿主のカラシンの種類にもよるが、一般に金ははがれやすく銀ははがれにくいようだ。また中には写真の丸印のようにヒレにまでプラチナ化が及ぶこともある。(これを商業的に「フルプラチナ」と呼んでいる。)
但し、プラチナ化でもその要因がこれとは異なる魚(とくに改良品種に多い)もいる。それについては後のほうで詳しく述べている。

Q.プラチナは遺伝するのか?
今現在、カラシンのプラチナにおいては遺伝しないとする説が有力である。ゴールデンテトラの繁殖例でも仔(F1)にプラチナ化した箇所はなかったという。ただ、メダカの仲間(ダツ目)のゴールデンデルモゲニーの場合、その仔にもプラチナが遺伝したという話も有り、プラチナの遺伝においてはまだまだ不明な点が多い。少なくともカラシンではF1にはプラチナ化は現れないと思われる。またプラチナ自体は遺伝子の形質による発現ではなく、寄生虫の寄生による後天的なものであるから遺伝するという説を肯定するのはたとえ劣性遺伝などを持ち出しても難しいと思われる。仔にプラチナがでたというのも恐らくプラチナの要因となる寄生虫が生息している環境で繁殖したためとも考えられる。しかしここで明言はできないので遺伝に関しては今後のさらなる研究を待ちたい。

Q.はがれる?はがれない?
プラチナ化した魚を長期にわたり飼育しているとプラチナがはがれてくることがある。上記に書いたように一般に金ははがれやすく銀ははがれにくいようであるが、はがれる要因は不明で、一部の書物には「水質」や「飼育環境」とある。私(管理人)の水槽ではめったにプラチナがはがれたことはない。しかしプラチナがはがれるということも事実なので、私(管理人)の水槽は「プラチナがはがれにくい環境」が成り立っているのではないかと考えている。その飼育環境を掲載しておこう。
pH:6.5前後(弱酸性)(カラシンには一部の種を除き、弱酸性が向く。)
底床:ソイル系(ADA製アクアソイル・アマゾニア)
ろ過形式:外部式ろ過装置(これは関係ないと思われる。)
混泳魚:珍カラ各種、オトシンクルス(混泳魚についても関係ないだろう。)
水換え:2週間に1回(水換え回数が少ない=水質の変化があまりないことがプラチナがはがれにくい一番の要因かもしれない。)

Q.ほかの魚の「プラチナ化」との関連について
最近では「光りメダカ」という背部にプラチナの光沢がある改良メダカがショップに流通しているが、光りメダカのプラチナも要因はカラシン同様、グアニン層によるものである。しかしそのグアニン層が構成される過程がまったく異なる。
光りメダカのプラチナはもともと内臓部を保護するために腹部に多く存在する「グアニン細胞」が改良の過程で遺伝子変異によって背部に移動し、できたものである。(光りメダカではグアニン細胞だけでなく、しりビレも背部に移動しているため、光りメダカには背ビレが存在しない。光りメダカの背部にあるヒレはしりびれなのである。)
よってグアニン層が寄生虫から派生するカラシンのプラチナと、内臓部を保護するためのグアニン細胞から派生する光りメダカのプラチナとはその要因は相違なるものなのである。
ちなみにプラチナネオンテトラとして販売される改良品種のネオンテトラがもつプラチナは光りメダカと同じ要因によるもので、珍しいものではない。

一方、カラシンのプラチナと全く同様の要因・過程でプラチナ化している魚にはデルモゲニー以外にコリドラスでも知られている。左の写真はコリドラス・クリムメニーのプラチナ個体(尾筒のみプラチナ化している)である。このようにカラシン以外の魚でもプラチナ化を引き起こす寄生虫の幼生が付いた場合、プラチナ個体が出現する可能性は否定できないといえる。

Q.プラチナの生息数について
一般的な書物の記述には「プラチナ・カラシンは数万匹に1匹の割合でしか混じらない」といったニューアンスの一文が見られる。これは本当であろうか?実際、ノーマルの(プラチナではない)カラシンにプラチナ個体が混じる事は稀な事例で、そういったことからこの記述は正しいといえるかもしれない。しかし、現在ショップで比較的まとまった数で流通するプラチナ・カージナルテトラなどは問屋が数万匹のカージナルテトラから執念で1匹1匹こまめに混じり抜きした個体をまとめて出荷しているのかというとそうは考えにくい。(その証拠にこれら(プラチナ・カージナル)はオランダやドイツルートでもともとある程度の数で輸入されてくる)つまりこれらから推測される事には1つである。プラチナ化しやすい水域が生息地に存在するという事である。「〜〜川の〜〜のところにはプラチナ化したカラシンがまとまって生息している」といった具合にプラチナ個体ばかりが生息する水域があると考えられるのである。(もちろん全てのカラシンにはいえないだろうが。)

Q.プラチナ個体に見られる謎の黒い点
プラチナ化したカラシンには割と高い確率で本来の体色とは無関係に体表にごくごく小さな黒い点が1個ないし2個見られることがある。これが何なのかは不明であるが、プラチナ化しているカラシンに特異的なものであることを踏まえると先に述べた寄生虫に関連するものである可能性が高いと思われる。



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